ルデラルで行こう。

メキシコ(2020.5月中旬以降~)やら、国際協力やら、日本語教育やら、読書記録やら…を綴るブログ

人生100年時代は楽しく、クールで、セクシーに!!

「SYDみがく講習会」ではどんなことをするのか

f:id:Takabit:20200104142247j:plain私が以前勤めていた会社には、謎の怪しい研修があった。

入社したばかりの頃は誰も知らない。

 

社会人になって初めて迎える年末年始の長期休暇と、正月ボケを引きずったままの状態で続けざまに突入する成人の日がらみの3連休を終えて、いよいよ仕事復帰することに諦めがつき、卓上カレンダーでゴールデンウィークの日数を数え始めるころ、社内ではなにやらこれまで聞いたことのない会話が耳に入ってくるようになる。

 

「今年のシュウヨウダンは〇△▢営業部の✖✖だって」とか、

「✖✖はシュウヨウダンだから今週はいないよ」とか。

 

上司や先輩に「『シュウヨウダン』って何ですか?」って聞いても、満足な回答は返ってこない。各地に伝わる人身御供の伝承のごとく、本社からは毎年一人に白羽の矢が立つわけだから、本社の管理職で経験している人は少なくないはずなんだけど誰も多くを口にしたがらないため、誰が経験しているのかもあまり知られていない。

 

分かっていることはただ一つ。

1月下旬のクソ寒いときに、三重県を流れる五十鈴川に入らされるということだけだった。

 

 

しゅうようだん【修養団】 

  • 平成23年3月22日には内閣総理大臣より「公益財団法人修養団」として認定を受けた社会教育団体である。
  • 1906年明治39年)に蓮沼門三(1882~1980)によって創立され、2018年2月に創立112周年を迎えた。
  • “愛と汗”の精神を理念とし、世界の福祉と平和に寄与することを目的として、「心の教育」一筋に青少年の健全育成を中心としたさまざまな活動を行っている。

 (公益財団法人修養団公式ホームページより抜粋)

 

syd.or.jp

 

真冬の川に入るという常軌を逸した<行為>と、このなにやら宗教じみた<団体>のため、社内では“誰も行きたがらないもの”という認識が共通のものになっているわけだが、私はそうでもなかった。

なにせ会社のお金で伊勢神宮に行けるのである。ちょっと冷たいのを我慢すれば、4日間、仕事をしないで給料がもらえる。毎日オフィスでつまらないデスクワークをしているよりもよっぽどエキサイティングでいいじゃないかと。

 

「僕、行ってもいいですよ」以前から社内で密かに言っていた。

 

 

正式名称は「SYDみがく講習会」。伊勢神宮内宮の参道に位置するSYD伊勢青少年研修センターにて行われる、3泊4日が基本のプログラム。費用は一般63,000円(税別)、会員58,000円(税別)…らしい。

(参照)「みがく講習会日程表」https://syd.or.jp/ise/nitteihyou.pdf

 

私が参加したのは平成30年1月16日から19日までの4日間。会社の研修として従業員を参加させている企業が多く、13の企業から総勢66名の人柱が集まった。気になる男女の内訳は男性60名、女性6名。年齢層は最高齢47歳、最年少18歳。18歳の参加者は新入社員研修として参加している人たちである。

 

f:id:Takabit:20200104143443j:plain

(入所前におかげ横丁で食べた伊勢うどん) 

 

SYD伊勢青少年研修センターで受付を済ませると、部屋割りが告げられる。

 

「あなたは『信頼村』です」

 

 

各部屋には「〇〇村」という名称が付けられており、「みがく講習会」での生活はこの村(部屋)単位で行われるのだ。部屋は8人部屋なので、各村の人数も7、8人程度。

その中で最年長者が「村長」になり、2番目の年長者が「助役」となる。「信頼村」では2番目の年長者は女性だったわけだが、女性は男性とは別の部屋に寝泊まりするため、女性が助役だと何かと都合が悪いとかなんとかいう理由で、3番目の私が信頼村の助役を拝命することとなった。

 f:id:Takabit:20200104142424j:plain

(「信頼村」の内部の様子)

 

集団生活で行う主な活動は以下の通り。

  • 童心行:開講式を終え受講心得などを聞いたあと、最初に行われるのがこの童心行。幼稚園児が行うような簡単なお遊戯やゲームを行うことで、普段の生活の中で意識している羞恥心や世間体、初対面の人に対する警戒心を解くことで、他の講習生と打ち解けるきっかけをつくることが目的。

 

  • 講話:毎日、外部から招いた講師または修養団の講師からありがたいお話を聞く。私の時の外部講師による講話は、学校法人精華学園高等学校理事長・岡村清二氏による『可能性の挑戦』と、信濃白炭 炭師・原伸介氏による、気が塞ぎ込みがちな現代社会においてストレスを抱え込まずに明るく生きていくための考え方についてのお話だった。

 

  • ブラインドウォーク:2日目の午後に行われる野外活動。2人一組となり、一人が目隠しをし、もう一人がサポートして野外を歩くことで、協働と助け合いの精神を再確認する。

 

  • 交歓の集い:2日目の夜、村毎に3~5分の余興を披露する。「信頼村」では、当時流行っていた、にゃんこスターの「リズムなわとび」のパロディで「リズム乾布摩擦(※)」を披露し大爆笑を誘った。
  • (※乾布摩擦にした理由は、「SYDみがく講習会」の毎朝の日課だから)

 

  • 聖火の集い:3日目の夜、水行を行う前に行う「反省行」。蝋燭に火を見つめながら静かに自らの原点をふり返る。

 

  • 水行:ふんどし一丁で、河原で「エイサー!」の掛け声による舟漕ぎ体操を行い、気持ちを昂ぶらせた後、「流汗鍛錬!!流汗鍛錬!!」と気合を入れながら五十鈴川に入る。肩まで水に浸かり、明治天皇御製の和歌「五十鈴川清き流れのすえ汲みて心を洗へ秋津島人」を2回詠ったあと瞑想。最後にもう一度詠って、終わる。

 

  • 内宮参拝:御垣内参拝(特別参拝、正式参拝)。通常の参拝では入ることができない外玉垣の内側に入って参拝する。

 f:id:Takabit:20200104144453j:plain

五十鈴川の清き流れ) 

 

 

結局、これらの活動を通して何が得られるのかというと・・・

  1. 「挨拶をしよう」「履物を揃えよう」「整理整頓をしよう」「食べ物を残さず食べよう」といった、日本人が長い歴史を通して築き上げてきた日本人としてのあり方、心の持ち方、生活習慣を改めて実践することで、自分の日々の生活や言動を見つめなおすことができる。
  2. 自分の存在が、祖先も含めどれだけ多くの人たちのおかげであり、どれだけ多くのものの恩恵をあずかっているのかということが再確認できる。そして、すべてのものに感謝する心が養える。先祖や両親への感謝の気持ちを持つことで、「今日一日を喜んで生きる」ことを知る。
  3. 日本の歴史や文化に対する興味が芽生え、日本人であることに誇りが持てるようになる。

 

まあ、こんな感じ。 

 

人生100年時代。長い人生を生きる上で、たまには仕事のことを忘れ、自分自身とじっくり向き合って日々の生活を見つめ直すことは大事なことと言えるでしょう。

しかし、普段の生活のなかでそういった機会を作り出すことはなかなか難しいのが現実です。

そんな現代社会において、自分とじっくり向き合う「場」を提供してくれる。それが「SYDみがく講習会」の最大のバリューと言えるのではないかと思います。