音を楽しむボーダーレスな多数の個体から成る「超個体」が奏でるのは前衛的な次世代ポップ・ミュージック:Superorganism
大勢の外国人の大人たちにまぎれて、なにやら幼げな日本人の女の子がひとり。
Superorganism。
2017年に結成された8人組の多国籍バンド。
メンバーの国籍はイギリス、オーストリア、ニュージーランド、韓国、そして日本。
流暢な英語を話し、自分よりも10歳近く年上のメンバーの中でふてぶてしいまでに堂々とした存在感を放つのは、
埼玉出身のボーカル、オロノ。
本名、野口オロノ。生年月日は不明だが、2017年Superorganism結成当時17歳だったということなので、2020年の今年は20歳のはず。
幼い見た目の日本人の女の子が海外で活躍してるっていうと、それだけで応援したくなるわけだが、
本人は、そういう音楽とは関係のない余計な文脈を嫌う。
「I'm not Japanese!」
日本人が海外で注目されると、「うわ~、すげぇ!」みたいな反応になりがちじゃないですか。実際にどんな音楽やってるとか、そこの部分じゃなくて。自分はそんな感じで取り扱われるのすごい嫌なんですよ。(「8人のアウトサイダーたちが紡ぐ「スーパーオーガニズム」という物語」より)
自分、写真だけでみたら、まず小学生に見えるじゃないですか。「ネット発のカラフルなバンド」みたいに言われてるじゃないですか。でも、そこじゃないと思うんですよね。突くところが。もちろん「オロノはこう思っていて、音楽がこう良くて、だからSuperorganismはすごいんだ」って思ってくれる人がいるってわかっているんですけど。でも、ライブとか、ネットで「オロノちゃん、めっちゃかわいい!」みたいなのが面倒くさいんですよ。(同上)
この“型にとらわれる”ことをよしとしない考え方は、Superorganismの音楽そのものの在り方にも通じている。
バンドって出来た時から、特別なサウンドを持ってたりとか、「自分たちはこういうバンドです」とか言っちゃうのがほとんどじゃないですか。そういうのってクリエイティブな面から言うと、自分の本当にやいたいことを出来なくしてしまうと思うんですよ。最初から「自分たちはコレ」って言っちゃうと。だから、(中略)────
「とりあえず好きな音楽を作っていって、みんながどんな反応をしているのかを見ながら、ゆっくり”自分たち”の音楽を作っていこうよ」みたいな感じでした。(「初来日公演決定!アルバム到着前に紐解くSuperorganismのあまりにも無邪気な真性ポップの断面」より)
オロノが Superorganismのボーカルになったきっかけは、当時グループのメンバーの一部で組んでいたバンド、エヴァーンズの来日。その公演を観に行ったオロノは楽屋にまで行ってメンバーと仲良くなり、その後のFacebookでのやり取りを通して、
「オロノは才能あるから、一緒にバンドやらない?」
新プロジェクトであるSuperorganismのボーカルとして誘われたんだとか。
現在はオロノを含む7人がロンドンの一つの家で生活を共にしているが、楽曲の制作はインターネットを介して行い─────
メンバーの中にソングライターが何人かいて、彼らがファイルを送ってくれて、それに他のメンバーが自分の得意な部分を足していって、その音源がミックスとドラムをやっているメンバーのところに行って出来上がりみたいな感じですね。
音楽を作ろうとしているわけではなく、皆が音を付け加えていく中で自然とそう───サイケデリックな音に───なるんだと思います。(「Superorganism初来日公演直前!~日本を離れて暮らすオロノが語る、バンドのユニークさを形作るポップへの愛と野心」より)
そこには「戦略」的なものはない。
彼らの多くの楽曲に用いられている、スマホの着信音だったり、駅の発車メロディ、地震警報音だったり、ゲーム音などのサンプリングも意図して用いられたものではなく、あくまで─────
「曲に合いそうだからやってみただけ」。
水の音や、缶を開ける音、靴で音を出したり、おもちゃを使ってみたり。
いかなるものにも囚われることがないSuperorganismが無邪気に奏でる楽しげなサウンドとキャッチ―な楽曲に、
音楽ってこういうことだよなあ─────
そう思わずにはいられないだろう。
NPR Music Tiny Desk Concert
SET LIST
"The Prawn Song"
"Night Time"
"Something for Your M.I.N.D."
"Everybody Wants To Be Famous" (Live at SXSW)
Nai's March
参考ウェブサイト(引用元)